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Title(櫻井):
初期宇宙における超大質量星形成と超巨大ブラックホール
(Formation of Super Massive stars and Super Massive Black Holes in the Early Universe)

Abstract(櫻井):
   赤方偏移z=6の宇宙年齢10億歳程度の初期宇宙において、太陽の10億倍以上の質量を持った超巨大ブラックホール(SMBH: Super Massive Black Hole)が存在していることが、近年の可視光・赤外光観測により示された(e.g., Marziani & Sulentic 2012)。このような初期宇宙におけるSMBH形成は、成長時間などの問題があるため、通常のPopIII星が重力崩壊することによりできる100太陽質量程度のブラックホール(BH)を種と考えることはできない(e.g., Haiman 2013)。
   近年、問題なく宇宙初期のSMBHの形成を説明できる可能性がある理論の有力候補として、direct collapse理論が考えられている。この理論は、通常のPopIII星より大きい10万太陽質量程度の超大質量星全体が直接重力崩壊することにより、同質量程度の、SMBHの種となる中間質量BHができる、という理論である(e.g., Haiman 2013)。この中間にできる超大質量星は、ビリアル温度が1万度程度のガス雲中にできる0.03太陽質量程度の大きな原始星から、周辺ガスの急速降着を通してできると考えられている。
   超大質量星の形成計算はこれまでにもなされているが(e.g., Hosokawa et al. 2013)、そのような計算では一定降着率を仮定しており、より現実的に降着率が時間変動することを考慮していない。本研究では、超大質量星の形成過程について時間変動降着を考え、星形成の数値計算を行う。

References(櫻井):
Marziani P., Sulentic J. W., 2012, New A Rev., 56, 49
Haiman Z., 2013, in Wiklind T., Mobasher B., Bromm V., eds, Astrophysics and Space Science Library Vol. 396 of Astrophysics and Space Science Library, The Formation of the First Massive Black Holes. p. 293
Hosokawa T., Yorke H. W., Inayoshi K., Omukai K., Yoshida N., 2013, ApJ, 778, 178

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タイトル(早津)
数値シミュレーションで探る遠方[CII]輝線銀河の検出可能性と統計的特徴

アブストラクト(早津):
近年まで、遠方星生成銀河は主に紫外域で観測されてきた。しかしダストが多い銀河の場合は、紫外光はダストに吸収され赤外域で再放射される。それゆえ宇宙の星生成史を明らかにするには紫外線で明るい銀河だけでなく、赤外線で明るいサブミリ波銀河を観測をすることが重要である。さらに、ALMA をはじめとする近年の遠方サブミリ波銀河探査では[CII]158 m輝線観測が大きな成果を上げている。[CII] 輝線の長所は、非常に明るい輝線であること,ダスト放射のピーク付近にいるため赤方偏移による減光の影響を受けにくいこと,z 6 ~ 8 では大気の吸収が少ない領域に入ることなどが挙げられる。一方で明るいサブミリ波銀河には、遠赤外線光度に対し相対的な[CII] 輝線光度が小さい場合がある(line decit)。この現象のメカニズムは未解明であり、このとき問題となるのは、明るい遠方サブミリ波銀河を[CII] 輝線で追観測した場合に期待より検出されないことである。

[CII] 輝線観測によって星生成史を明らかにするには、物理的な過程を考慮した[CII] 輝線光度の見積りと、観測と比較可能な理論予測が重要である。[CII] 輝線の主な起源である中性水素ガスの理論モデルに、二相モデルがある。二相モデルは中性水素ガスにおける加熱・冷却・電離・再結合の素過程を熱平衡・電離平衡状態を仮定して解くことで、観測的に知られる水素原子雲の二相の圧力平衡状態を再現するモデルである。本研究では二相モデルを宇宙論的銀河形成シミュレーションに応用し,さらに[CII] 輝線光度の計算に紫外線輻射強度のダスト減光の効果を取り入れる。すでにShimizu et al.(2012) の銀河形成モデルと二相モデルによってline decit が再現され,分布が既存の観測と一致することは確認済みである。本講演ではALMA observing tool を用いて設定したALMA 大型観測の観測条件を用いて、将来観測の検出可能性と物理的特徴を議論する。

References (早津)
G.M. Wolfire, D. Hollenbach, F. C. Mckee, et al. ApJ, 443, 152W (1995)
K. Nagamine, M. A. Wolfe, L. Hernquist, ApJ, 647, 60N (2006)
I, Shimizu, N. Yoshida, T. Okamoto, MNRAS, 427, 2866S (2012)
T. Okamoto, I. Shimizu, N. Yoshida, PASJ, 66, 70O (2014)


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Last-modified: 2014-10-16 (木) 07:34:47 (1134d)