安倍 牧人 :"星間輻射場によって制御される星団形成過程の3次元輻射流体力学による研究"

古い天体として知られる球状星団は、初期の銀河形成史の解明という点で重要となる天体である。ところが、球状星団のように非常にコンパクトな星団を形成する物理過程は明らかとなっていない。本研究では、特に星団形成過程における周囲の天体からの星間輻射場の存在に注目し、球状星団サイズの星団を形成する可能性について考えた。1次元球対称の輻射流体力学計算によれば(Hasegawa et al. 2009)、強輻射場中ではコンパクトな星団が形成される可能性が指摘されているが、より一般的な系として想定される非等方な星間輻射場が星団のサイズに与える影響については分かっていない。本研究ではこの点を考慮し、3次元輻射流体計算によって片側照射・等方輻射場における星団形成過程について調査した。その結果、ガス雲全体を電離できるほどの強輻射場中においては、片側照射の様に背景輻射場が非等方的である方が形成される星団がコンパクトになることを示し、また球状星団程度のサイズの星団が形成可能であることを示した。
五十嵐 朱夏 :"ダークマターハローと銀河中心ブラックホールの重力場における球対称定常銀河風解析"

銀河から星間ガスが流れ出す銀河風は、銀河進化に影響を与え、銀河間空間の重元素量を左右する重要な現象である。我々は、ダークマターハロー及び銀河中心ブラックホールの重力場中での球対称定常銀河風の加速過程について調べている。本研究では、銀河風で実現される可能性のある遷音速流を多様なパラメータ空間内で、その解曲線のトポロジーによって系統的に分類した。その結果、同じ重力場構造であっても、2つの異なるタイプの遷音速解が存在することが分かった。銀河中心近傍の遷音速点を通る解は銀河中心ブラックホールによる重力場の影響が支配的であり、銀河ハロー部分の遷音速点を通る解はダークマターハローが生成する重力場の影響が支配的である。それぞれの遷音速解は、質量流束と流れの始点が異なっており、実現する遷音速解によって、銀河風が銀河間空間の化学進化に与える影響が異なることを示す。本講演では、この2つの遷音速解の違いについて、詳細に報告する。
稲吉 恒平 :"初代銀河における超巨大ブラックホールの種形成"

初期宇宙(z>7)に存在する超巨大ブラックホール(〜10^9Msun)の起源として、 超大質量星(>10^5Msun)の重力崩壊によりできた種ブラックホールが考えられている。本研究では3次元流体シミュレーションコードEnzoを用いて、 超大質量星を形成するガス雲の重力収縮・分裂過程を調べた。本研究では、特に銀河形成時に誘発される乱流が超大質量星形成に与える影響について調べた。 その結果、ガスは激しい分裂は起こさずに崩壊して、中心に超大質量星の原始星を形成する事が分かった。
清水 一紘 :"Physical Properties of very high-z Galaxies in Cosmological simulations"

Hubble Space Telescope (HST) に搭載された Wide Field Camera 3 (WFC3) で得られた深い撮像データに、いわゆる Lyman break 法を適用して、z = 7 を超える数多くの high-z galaxies 候補が発見されてきている。特に、2012年に行われた一連の観測キャンペーン (UDF12) による極めて深い撮像データにもとづく、従来よりロバストな high-z galaxies 候補 (UDF12 galaxies) をここでは取り上げる。これら high-z galaxies の物理的性質を調べる事は、初期宇宙における銀河の形成と進化を理解するために非常に重要である。そのために、いわゆる SEDフィットを用いる場合、静止系 UV 域から(近)赤外といった幅広い波長域でのデータが必要であるが、現在のところ、ほとんどが HST で撮られた静止系 UV域のデータしかなく、なかなか困難な状況である。そこで我々は、宇宙論的流体シミュレーションを行い、HST で観測された銀河(UDF12 galaxies) の諸性質について調べた。その際、シミュレーション結果から light cone を作成して疑似観測を行ない、実際の UDF12 観測と同じ color selection を行う事で、シミュレーション銀河と UDF12 銀河を直接比べられるように工夫した。 結果として、これら high-z galaxies の halo (stellar) mass は 10^9 - 10^12 (10^7 - 10^10) Msun 程度である事が分かった。 また、star formation rate (SFR) と halo あるいは stellar mass は ほぼ比例関係にあること、specific SFR は、halo あるいは stellar mass そして赤方偏移に依らずほぼ一定であることが分かった。 また興味深い事に、特に明るめの銀河ではmetallicity が 0.1から0.5 Solar metallicity に達しているものがあり、 かなり早い段階で重元素汚染が進んでいる事がわかった。本公演の最後に、[OIII] 88um 輝線を使ったz > 8 を超える銀河の、ALMA による分光同定の可能性について言及する予定である。
鈴木 裕行 :"内部及び背景紫外線による銀河の星形成史への影響"

WMAPなどのCMBの観測で、宇宙再電離は赤方偏移10程度にて起こったことが示されていることから、多くの銀河は電離宇宙にて、つまり紫外線背景輻射場中にて形成されるということがわかる。原始銀河内部にて形成された星々も紫外線を放出し(これを内部紫外線という)、系の内側からガスを電離・加熱する。天体は紫外線から守られた自己遮蔽領域にてのみ形成されるので、背景・内部双方の紫外線は銀河形成に著しい影響を及ぼす可能性がある。そこで今回は、SPH法による3次元流体計算に、背景・内部双方の紫外線の輻射輸送を物理モデルとして組み込んで計算することで、銀河形成において背景・内部紫外線が銀河の星形成史にどのような影響を及ぼすかを調べた。その結果、進化の初期段階では内部紫外線による影響が著しく、進化の後期段階では逆に背景紫外線の効果が卓越することがわかった。また、質量の小さな系や形成時期が遅い系はより紫外線の影響を顕著に受けることがわかった。現在は形成される星の初期質量関数や星形成効率を変えることによる進化への影響を調査中で、可能であればそれについても報告をする。
須田 拓馬 :"金属欠乏星の観測データに見る初代星の痕跡"

初代星の発見や宇宙の初期進化への理解を目的とした金属欠乏星の観測はこれまでに数多く行われており、統計に耐えうるほどのデータが蓄積している。これらのデータからは宇宙初期に関する様々な情報が抽出されており、初代星・初代銀河形成を理解するヒントが得られると期待される。本講演では、これまでに得られた知見について概観するとともに、最新の観測成果を紹介する。
須藤 佳依 :"初代星は矮小銀河ハローのどこにいるのか?"

宇宙初期に生まれた初代星は、理論的研究により、太陽の数百倍の質量を持った巨大な恒星になっていったのではないかと考えられていた。しかし、巨大な恒星のみならず、100Msun以下の星が複数形成されるという新しいシミュレーションの結果が発表された (Clark et al. (2011);Hosokawa et al. (2011); Greif et al.(2012))。この結果は、初代星形成の理論の進展に大きな影響を与え、初代星が現在でも生き残っているかもしれないという可能性を示唆するものとなった。そこで、本研究では宇宙で最初に誕生した初代星のホストであるミニハローが、ハロー同士の合体を通じ、現在の矮小銀河のハローにどのように取り込まれていくのか、その過程を高精度の宇宙論的なN体シミュレーションを用いて調べることを試みた。その結果、初代星を含むミニハローの中にあるものはそのまま矮小銀河の中に取り込まれ、また一部は潮汐力によって引き伸ばされて銀河ハローの内部に広がることがわかった。本講演ではこれらのミニハローに含まれている初代星を、次世代の観測装置を用いて観測することが可能なのかどうかを検証し、その結果を報告する。
高橋 亘 :"自転する初代星の元素合成計算"

PopIII星は始原ガスで構成される、宇宙ではじめての金属供給源である。宇宙最初期・最遠方の天体であるPopIII星に関して、その性質を制限する二種類の重要な情報が存在する。一つは金属欠乏星の観測から得られるPopIII超新星爆発に対する制限であり、もう一つはPopIII星形成計算から得られる恒星進化の初期条件への制限である。先行研究により、初期宇宙における比較的高エネルギーな超新星の存在が金属欠乏星のコバルトや亜鉛などの観測を説明する事が示されているが、観測される炭素・窒素などの起源は明らかになっていない。また詳細なPopIII星形成計算は近年行われるようになったもので、この成果をとりいれたPopIII元素合成計算は行われていない。
本研究では、PopIII大質量星の恒星進化・超新星元素合成計算を新たに行った。恒星進化計算においては、近年詳しく議論されるようになった自転の効果を取り入れた。本講演では、一連の理論計算を概説したのち、理論計算の結果に基づいた金属欠乏星の組成分布の解釈を議論する。
千秋 元 :"低金属量重力収縮ガス雲中でのダスト成長"

金属を含まないガス雲の収縮によって形成される初代星は一般的に大質量(数 10-1000 太陽質量) であったと考えられている。一方、現在の星の質量は平均的に太陽質量以下である。星質量の遷移が起きた過程を知ることは、宇宙の構造形成や初代銀河の性質に制限をつける上で重要である。しかし、その過程は十分解明されていない。
星質量の遷移の過程として、ガス雲のダスト冷却が影響を与えていると考えられている。ダスト冷却はガス雲が高密度になったときに効果的となり、ガスが重力不安定によってより質量の小さい構造に断片化すると考えられている。さらに近年では、ダスト成長 (ガス中の金属原子がダストに取込まれる現象) がガスの熱進化に影響を与える可能性があることが指摘されている。本研究では、ガス雲の進化を準解析的に追う過程で、ダスト成長も同時に解いた。本講演では、その結果について報告する。
また、本研究では様々な金属量を持つガス雲の力学進化を3次元流体シミュレーションで追った。ここでは、金属元素を含む非平衡化学反応と放射冷却も同時に解いている。その結果や多次元効果についても議論する。
戸谷 友則 :"GRB 130606A 可視残光から得られた宇宙再電離への示唆"

再電離に近い z = 5.913 の GRB 130606A は high-z GRB の中でも例外的に明るく、しかも母銀河の HI 吸収量が小さく、再電離について制限を与える上で理想的なGRBである。我々はすばるFOCAS で取得した極めてS/Nの高い可視残光スペクトルのライマンα減衰翼の精密な解析を行ったところ、母銀河のHIだけでは説明できないスペクトルのゆがみを見いだした(統計有意性約3σ)。系統誤差も様々に検討したが、これを説明できない。最終的に、IGM の diffuse HI による吸収が最も自然な説明であるという結論になった。これは GRB 残光について初めて示唆された IGM 中性水素の兆候であり、z~6 でまだ再電離が完全に終わっていないことを示唆する。(reference: Totani et al. 2013, submitted to PASJ, arXiv:1312.3934)
冨永 望 :"金属欠乏星から探る初代星の超新星爆発の性質"

宇宙で最初の重元素汚染は初代星の超新星爆発によってもたらされ、その記録は金属欠乏星の元素組成に残されている。近年の大規模金属欠乏星探査観測によって、多数の金属欠乏星が発見されており、それらを用いて統計的に初代星の超新星爆発の爆発の性質を制限することが可能となってきている。そこで、本研究では、[Fe/H]<-3.5の48個の星に対して超新星モデルを構築した。その結果、[(C+N)/Fe]は放出される鉄の質量と、[(C+N)/Mg]は残される中心天体の質量との相関があることを発見した。さらに、その関係を用いて初代星の超新星爆発の放出する鉄の質量、中心天体の質量の分布を明らかにした。
中村 鉄平 :"異なる金属量と星形成後期段階の進化"

金属量の異なる環境における星形成前期段階の進化は先行研究で調べられている。今回の研究では星形成後期段階の進化について研究した。星形成後期段階のシミュレーションを金属量のパラメーターを変え実行し、その結果を解析した。
行方 大輔 :"AGNの輻射にさらされたガス雲の輻射流体計算"

本研究では、AGNの活動性の継続性を理解するため、AGNへのガス供給を担うであろう光学的に厚い分子雲の寿命が、輻射強度($\mathcal{U}\equiv L_{\mathrm{bol}}/(4\pi r^{2}c n_{\mathrm{H}})$)と光学的厚み($\mathcal{N}_{S}\equiv 2 r_{\mathrm{cl}}/l_{S}$;ここで、$r_{\mathrm{cl}}$は初期の分子雲の半径、$l_{S}$はHI光電離のStr{\"o}mgren length)にどのように依存するのかを3次元輻射流体計算、及び、1次元輻射流体計算によって調べた。
これまでの調査で、分子雲の進化は、大きく分けて光蒸発駆動と輻射圧駆動に分類できることがわかった。どちらの進化となるかは分子雲の光学的厚み$\mathcal{N}_{S}$でほぼ決まり、$\mathcal{N}_{S}$が比較的小さい場合には光蒸発駆動となり、十分に厚い場合には輻射圧駆動となる。いずれの場合でも分子雲に衝撃波が発生し、衝撃波が分子雲を掃き集め、重力崩壊に至らしめる。分子雲の寿命は衝撃波が分子雲全体を掃くタイムスケールで決定される。光蒸発駆動の場合、衝撃波は光蒸発流の反作用で発生する。平均の衝撃波速度はロケット効果のため、輻射圧だけから推定される値よりも大きくなる一方で、光蒸発によって質量を失うため、重力崩壊に至るガスの割合は小さくなるという特徴がある。一方、輻射圧駆動の場合には、光蒸発流のかなりの割合が輻射圧によって閉じ込められるため、あまり質量を失わずに衝撃波が進行し、大部分の質量が重力崩壊に至ると期待される。
十分小さな$\mathcal{U}$の場合には、衝撃波は発生せず、分子雲は単に輻射によって押されるだけと期待される。この点を踏まえ、上述した結果が、AGNトーラスモデルの1つであるクランピートーラスモデルに対し、どのような示唆を与えることができるのかについても議論したい。
野澤 貴也 :"種族III巨大質量星の赤色超巨星星風中におけるダスト形成"

本研究では、初期質量が500 Msunの赤色超巨星のモデルに基づいて行った星風中でのダスト形成計算の結果を報告する。その主な結果は、(1)定常的な星風中では、炭素質ダストがlognormal-likeなサイズ分布を持って形成され、その平均半径は質量放出率や星風速度に依存する、(2)質量放出率が(0.1-3)x10^{-3} Msun yr^{-1}かつ星風速度が1-100 km s^{-1}の範囲であればダストは効率的に凝縮し、赤色超巨星段階の間に最大で0.17 Msunの質量の炭素質ダストを形成する。それゆえ、もし種族III星の初期質量関数が極めてtop-heavyであるならば、巨大質量星は初期宇宙ダストの重要な供給源の一つとなることができる。また、形成された炭素質ダストから期待される減光曲線を導くとともに、巨大質量星から放出された金属やダストに基づいた超金属欠乏星の元素組成や形成過程を簡単に議論する。
平野 信吾 :"始原的ガス雲のnon-biasedカタログから求める始原星の初期質量関数"

宇宙初期の始原的ガス雲で形成される始原星(種族IIIの星)には、通常考えられる初代星(種族III.1)の他に、他の天体からの輻射によって変性した始原的ガス雲から生まれる種族III.2の星が考えられる。原始星形成までのガス雲熱進化がそれぞれ異なるため、異なる星質量となることがモデル計算より示されている。従って始原星の星形成を明らかにするためには、種族III.1, III.2それぞれの星形成率と初期質量関数を調べる必要がある。我々は新たに大規模・高解像度な宇宙論的シミュレーションを行い、27 [Mpc/h (comoving)}]^3 という宇宙論的領域における始原的星形成ガス雲のnon-biasedカタログを構築した。得られた始原的ガス雲を種族III.1, III.2の星形成ガス雲に分類することで、それぞれの星形成率が求まる。また個々のガス雲の物理量が得られるので、初期質量との関係式が決まればガス雲のパラメータ分布から初期質量関数が求まる。今回、化石光解離領域での星形成について調べるため、輻射強度をパラメータとしてガス雲の重力収縮から原始星の降着進化までを計算し、星質量の輻射強度への依存性を調べた。始原的ガス雲における主な冷却源である水素分子が光解離することで収縮が遅れ、ガス雲はより高温な熱進化を行い、原始星への降着率が増大する。一方、緩慢な収縮によってHD形成が進むことで逆に冷却が進むなど、輻射強度・収縮速度に依存して収縮ガス雲の熱進化は複雑な結果を示した。
藤本 信一郎 :"Pop. II・III大質量星の非球対称重力崩壊型超新星爆発における爆発的元素合成"

本研究では, 定在降着衝撃波不安定性および対流により誘発されたニュートリノ駆動重力崩壊型非球対称超新星爆発における爆発的元素合成を調査した.ビッグバン組成を持つ始原ガスから生まれた金属量0の11-40 Msunの初代大質量星(Pop.III星)および金属量が太陽の1万分の1の11-40 Msunの低金属量大質量星(Pop.II星)に対して調査を行なった.ニュートリノ吸収および現実的状態方程式を考慮した2次元軸対称流体力学コードを用いて,原子中性子星から照射されるニュートリノ光度・温度をパラメータとして,コアバウンスから数秒に渡って爆発直後 (バウンスから数秒) の放出ガスのdynamicsを流体力学計算した.その結果, 様々な爆発エネルギー(大きさと非球対称分布)を持つ爆発モデルを得た.
次に, この結果に基づいて, 爆発により放出されたガス中における元素合成計算を行ない,放出ガス組成の恒星質量・金属量への依存性を調べ, 以下のことを示した;(1) Pop.III大質量星の場合, 同質量のPop.II星の場合と比較して, より低いエネルギーで爆発するモデルが存在する. 低い爆発エネルギーの結果, 放出されるFeはPop.III星の場合がより少ない.(2) 軽い(15Msun以下の)Pop.III大質量星の低爆発エネルギーモデルのみ,一部の金属欠乏低質量星表面で観測される炭素過剰状態 ([C/Fe] >= 1) が放出ガス中で実現される.(3) 特に12-13Msun以下のPop.III大質量星の低爆発エネルギーモデルの超新星放出ガスのMgより軽い元素の組成は特異である. このような超新星爆発の放出ガス中のO, Mg質量が少なく,いくつかの炭素過剰な金属欠乏低質量星表面で観測される正の[C/O]かつ0.5を超える[O/Mg]の起源である可能性がある.
藤本 正行 :"恒星の回転の進化について"

恒星の回転は、恒星進化への影響は、内部での核反応生成物 の mixing によると考えられる表面組成の特異性等との関連して注目されている。また、高速の回転星についてはガンマ線バーストあるいはBe 星の起源等に関連すると考えられる。
回転の進化の研究はこれまで適当な角運動量輸送機構を仮定した数値計算に基づいて議論されてきたが、角運動量の輸送については、その機構・係数とも不定 であり、明確な結論が得られていないのが現状である。恒星の回転は角運動量分布とともに慣性能率にも依存する。我々は、恒星進化に伴う慣性能 率およびその内部分布の変動に基づいて回転の進化を議論し、観測との対応から角運動量の輸送効率を評価する alternative な方法を提案する。
提案した方法を用いて、Be 星の起源を議論し、主系列段階でのこの方法の有効性を示す。また、Kepler 衛星の観測との比較から、進化した段階での角運動量輸について考察する。これらの結果を敷衍して、回転の進化の金属量依存性、とくに、初代星の進化への影響について議論する。
古屋 玲 :"O型星周囲の回転トロイドにおける降着流と分裂過程の観測からのヒント"

初代星が形成された素過程を観測的に研究することは非常に困難であるが、形成途上の銀河系内のO型星周囲の回転トロイドにおける降着流と分裂過程の観測からヒントを得ることができる。本講演では我々のグループの成果を中心に電波干渉計を用いた降着流の観測からの知見を紹介する。また、これらの回転トロイドに対して、最近、すばる望遠鏡による中間赤外線撮像観測を行ったところ、多数の分裂素片を検出した。銀河系内の大質量星形成過程に関しては ”monolitic accretion”説と”competitive accretion”説の間に論争が展開され、ここ数年の観測は前者を支持するものが多いように思われるが、「現実の」O型星はやはり両者の中間的な描像なのかもしれない。長期的にはこのような詳細観測が可能なターゲットを金属量の低い環境下に求めていくことで、初代星形成の理解へのヒントを得ていくことが重要であろう。
細川 隆史 :"初代星形成質量降着期の3D計算"

宇宙初代星の質量を決めるためには、質量降着期の進化を詳しく調べる必要がある。最近は3D輻射流体計算を用いた研究が進められており、円盤分裂と原始星輻射フィードバックの複雑な相互作用が調べられつつある(e.g., Stacy et al.12; Susa 13)。今回我々もより現実的な進化を追うため、新しく多次元磁気流体コード:PLUTOをベースにした3次元計算の研究を始めた。今回はこの計画の現状について発表します。
山井 勇樹 :ガスによる力学的摩擦を考慮した原始銀河ブラックホールの合体過程の研究

銀河中心にはSMBHが存在するとされ10^6-10^9 Msun規模のBHも観測されているが、その形成過程の正確なところは不明である。初代星残余物としての種BHを仮定した場合、降着だけでは観測されている規模には成長できない。それゆえBHの合体の可能性を考える意味がある。第一世代天体の頃はガスが豊富で、ガスによる力学的摩擦の効果が有意に働く可能性が先行研究でも示唆されている。このガスの存在がBHを系の中心に集め、BH同士の3体反応の確率・頻度を上げ、BHバイナリーから角運動量を引き抜いて軌道を減衰させている事が分かった。
 本研究ではBHの合体過程の物理を正確に把握するために、ガスの力学的摩擦の効果に加え、重力波放出や近日点移動の効果も取り入れたBH多体系の数値計算を行った。また、BHの合体を司る物理として何が支配的なのかを議論し、ガスの密度やBHの質量を変えながら、BH合体の可能性の判断材料となるロードマップ作成の道標となる研究を目指した。
山澤 大輔 :Pop III-II transition in young galaxies

Dust grains are essential for a transition from the massive, first stars (Population III stars, ~ a few * 10 M_sun) to the low-mass, normal stars (Population I/II, ~ 0.1-1.0 M_sun), since the dust grains cool the star-forming gas and cause the low-mass fragmentation resulting in the low-mass star formation. We couple the evolution of mass and size distribution of dust grains with an analytic model of galaxy formation to investigate the Population III to Population I/II (Pop III-II) transition.
We show the dependence of Pop III-II transition on the dark matter halo masses and redshifts and find that the Population III stars can form in relatively-massive galaxies with a virial temperature T_vir ~ a few * 10^4 K even in redshifts z < 8. Then we show that the Pop III-II transition can be well described by a critical metallicity Z_cr~2*10^-5 Z_sun. Finally we discuss the observability of these galaxies hosting the Population III star formation.

back to HOME