プログラム+アブストラクト(11月24日更新)

招待講演(I) ... 40分 (30分+議論10分)
一般講演     ... 20分 (15分+議論5分)
アブストラクトなし版: html pdf

11月30日
09:00-09:40 大向 一行 初代星の形成(I)
初代星の研究の歴史と現状について概観します。
09:40-10:00 須佐 元 残存初代星の観測可能性
10:00-10:20 須田 拓馬 初代星探査のための矮小銀河版SAGAデータベース
銀河系近傍にある矮小銀河は天の川銀河の構成要素の名残と考えられ、銀河系形成過程を理解するうえで重要な天体である。近年では赤色巨星の分光観測によって銀河系ハローと同等の超金属欠乏星が発見されている。本講演では、SAGAデータベース(http://sagadatabase.jp)を拡張した矮小銀河版データベースを用いて、矮小銀河における宇宙初期の星形成史・化学進化について検証し、初代星の痕跡を探る。
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10:40-11:20 石垣 美歩 金属欠乏星の化学組成から探る初代星の性質(I)
11:20-11:40 藤本 正行 銀河ハローの炭素過剰星の起源と星形成史
銀河系ハローの超金属欠乏星では、炭素過剰(CEMP)星が大きな割合を占める。それらは、中性子捕獲元素も分布が大きく異なっており、銀河系ハロー星の起源に関しての情報をもたらすと考えたてている。
これらのCEMP星の成り立ちについて、s-過程元素合成の核種合成の結果とSAGAデータベースに収集された観測データの比較・較量から導かれた統一的な解釈を紹介する。また、これによってもたらされる、銀河系形成期の星形成、初期質量関数や連星系形成、の描像について議論する。
11:40-12:00 松野 允郁 超金属欠乏星におけるLi-depletion の起源
金属欠乏星の化学組成には初期の銀河の化学進化の情報が残されているとして、過去数十年にわたり盛んに研究がなされてきた。一般にリチウムの含有量は金属欠乏星([Fe/H]<-1.5)では恒星によらず一定(Spite plateau)となる。この結果は初期宇宙に存在するリチウムは主にビッグバンで生成され、金属欠乏星中のリチウム含有量はビッグバン元素合成による組成を保存しているものとして解釈されてきた。しかしながら、近年進んだ超金属欠乏星([Fe/H]<-4.0)の観測によって問題があることが明らかになってきた。超金属欠乏星の化学組成はよりビッグバン組成に近いものになることが期待されるが、超金属欠乏星ではほとんどの恒星がSpite plateau よりも低いLi含有量を持つ(Spite plateau のbreakdown)。一方で、超金属欠乏星ではほとんどの恒星が重元素に過剰を示さずに炭素に過剰を示すCEMP-no 星として観測される。したがってSpite plateau のbreakdown が超金属欠乏星としての性質に関連するものではなく、CEMP-no星としての性質に関連している可能性が考えられる。我々はこの関連を議論するため、[Fe/H]~=-3.2と比較的金属量が高いCEMP-no星のLi含有量の解析を行った。得られたLi含有量はSpite plateauにのる値となり、Spite plateau のbreakdownとCEMP-no星としての性質の間に関連がないことを示唆する結果となった。また、Li含有量からは未だ議論が続くCEMP-no星の過剰な炭素の起源についての制限を議論することも出来る。今回の結果はCEMP-no星の形成過程には必ずしもLi-depletionは伴わず、binary mass transfer 起源以外のCEMP-no星が存在する可能性を示唆する。
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13:30-13:50 森 陽里 弱い解離輻射を受けた始原ガス雲の成長
初期宇宙(z~6)で観測されている、太陽の数十億倍の質量を持つ超大質量ブラックホール(SMBH)の形成モデルとして、Direct Collapseシナリオが提唱されている。初代星を形成する始原ガスは主に水素分子によって冷却されるが、外部からの強い紫外輻射によって水素分子が解離されると、高温でのみ効く水素原子によって冷却される。この時、ガス雲は高温のまま収縮し、分裂せずに大質量星を形成する。これがSMBHの種になると考えられている。しかし、大質量星形成に必要な紫外輻射の強度(臨界輻射量)は、宇宙の平均的な紫外輻射と比べて非常に大きいことが分かっている。そのため、臨界輻射量よりも弱い輻射を受けて成長する始原ガス雲が多く存在することが予想される。そこで本研究では、弱い外部輻射を入れた3次元流体シミュレーションによって、始原ガス雲の成長を調べた。その結果、臨界輻射量に比べて弱い輻射であっても、天体の形成される時期が遅れ、できる天体の質量が増大することが分かった。輻射の量を変えた時の、形成される星の質量の変化と分裂の可能性を報告する。
13:50-14:10 鄭 昇明 宇宙論的環境下でのDirect Collapseシナリオによる
SMBHの形成可能性
近年z∼7の初期宇宙において、すでに10億太陽質量の質量を持った超大質量ブラックホール(SMBH)が存在する事が明らかになってきた。形成過程に関しては、初期宇宙において非常に特殊な環境下に存在するガス雲から超大質量星を経て∼10万太陽質量のBHが形成されるDirect Collapse(DC)シナリオが提唱されている。このBHは観測されたSMBHの種となることが期待される。DCに関しては様々な研究がなされているが、現在のところ宇宙論的な状況で実際に超大質量星が形成される過程は確かめられていい。本研究では、DCが宇宙論的な環境下で起こりうるかを検証する。
宇宙論的な初期条件から始める数値計算をGadget2を用いて行い、DCが起こりうる環境が実現しているかを確かめる。DCは非常に低金属なガス雲で、かつ非常に輻射の強い状況で起こると考えらる。このためにも、(1)形成活動による金属汚染の過程、(2)近傍銀河からの輻射強度の計算、(3)輻射場のもとでのガス雲の進化、を考慮する必要がある。本研究においては、N体計算をもとに準解析的に星形成史を再現することで(1)、(2)を考慮する。次に、得られたDC候補ガス雲の進化を流体計算することで(3)の過程を追う。
本研究ではシミュレーション領域内でDCガス雲を探索し、40個のDC候補ガス雲について流体計算を行った。結果として、2つのDCガス雲においてDCが起こることを確かめた。残りの38個の候補に関しては、光源ハローからの潮汐力等により崩壊は進行せず先行研究が仮定していた大質量星形成には至らなかった。本講演では光源ハローとの相互作用を考慮した上でのDCが起こるための条件と、宇宙論的初期条件より得られたDCガス雲、またそこで形成される超大質量星の性質について議論する。
14:10-14:30 櫻井 祐也 超大質量星形成の降着段階における間欠的降着と
輻射フィードバックの影響
観測で赤方偏移6-7に超巨大ブラックホール(SMBH)の存在が確認されている。しかしその起源についてはよく知られていない。昨今、SMBH形成理論として、1-10万太陽質量程度の超大質量星がBHに直接崩壊し、そのBHがSMBHに降着・合体で成長していくという直接崩壊理論が注目されている。超大質量星形成で重要なことの一つは、輻射フィードバックが星形成降着段階で起きるかどうかである。星の進化計算により、一定降着率の場合ではフィードバックが効かないことが知られている。しかしより現実的には円盤不安定性・分裂によって星への質量降着は間欠的に変動しつつ起こる。この場合、降着率が低い時期(静的降着期)があり、その期間が大雑把に千年以上であるとフィードバックが効くことが、従来の星の進化計算から分かっている。しかし従来の研究では、降着史に対し理想的なモデルを用いていた。本研究では現実的な間欠的降着史のもとでの星の進化計算を行った。降着史として2D流体シミュレーションから計算したものを用いた。静的降着期に星が収縮してUVが大量に出ると予想されるが、計算により星の収縮は起こらず、輻射フィードバックが起きないことが分かった。これは静的降着期の期間が千年未満程度と短いことが理由であると考えられる。
14:30-14:50 仲内 大翼 超大質量原始星の降着進化に伴い発生する
アウトフローについて
初代銀河における特別な環境下では,0.1-1太陽質量/年という非常に高い質量降着率のもと原始星が進化し,最終的に105太陽質量をもつような超大質量星が形成される可能性がある.このような超大質量星は高赤方偏移で発見された超巨大ブラックホールの起源天体として重要である.近年,超大質量星の形成過程を調べる一環として,非常に高い質量降着率下における原始星の進化計算が行われた.その結果,降着進化の後期段階において原始星はエディントン光度に近い光度で輝き,なおかつ外層が非常に膨張した超巨星のような構造をもつことが明らかになった.また星の表層部においては密度反転現象も見受けられた.このような外層構造の重力束縛は弱く,進化の途中でアウトフローが発生する可能性がある.しかし,先行研究では静水圧平衡を仮定した進化計算を行っているためアウトフローを扱うことができない.そこで本発表では定常・球対称な仮定のもと,静水圧平衡の近似が十分良い星内部の構造と滑らかにつながるアウトフロー解について議論する.また,アウトフローが原始星の進化に与える影響についても議論する.
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15:10-15:50 関口雄一郎 大質量星の重力崩壊:初期条件と数値相対論シミュレーション(I)
15:50-16:10 松本 達矢 超大質量星からの非常に明るい超新星
超大質量星は赤方偏移z=6以上で観測されている超巨大ブラックホールの種BHを与える天体として注目されている。
本講演では、超大質量星が重力崩壊時に起こす非常に明るい超新星について述べる。超大質量星は重力崩壊時に内部でジェットが生成されるとgamma-ray burstを起こす可能性がある。この場合、星内部をジェットが伝播する最中に、コクーンと呼ばれる部分にジェットのエネルギーが蓄えられる。ジェットブレークアウト時にコクーンもブレークアウトし、球状に膨張しながら熱放射を行う。我々は、この放射が非常に明るい超新星として高赤方偏移でも観測可能であることを発見した。
講演では、このイベントについて詳述し、またイベントレートや、観測から期待される超大質量星への示唆などについて議論する。
16:10-16:30 梅田 秀之 急速質量降着により形成された超巨大質量星の進化と
一般相対論的重力崩壊
高赤方偏移に存在するSMBHの種の候補として急速質量降着により形成された超巨大質量星が考えられている。本講演ではこのシナリオに沿って形成された超巨大質量星の進化とその一般相対論的重力崩壊についての計算結果を発表する。
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16:50-17:30 谷川 衝 白色矮星連星のシミュレーション(I)
17:30-17:50 田川 寛通 宇宙初期巨大ブラックホールの成長は降着か、合体か
初期宇宙において、巨大ブラックホール(BH)が降着で成長したのか、合体で成長したのかは現在論争の最中である。本研究では、巨大BHの成長を決めるキーとなる物理を明らかにするために、質量降着とガスの力学的摩擦を取り入れた、多重BHの進化の数値シミュレーションを行なった。状況としては、10個の30太陽質量のBHが原始ガス雲内に組み込まれた場合を考える。合体過程において、相対論的効果として、近日点移動の効果と重力波放出を考慮に入れた。結果として、降着率が平均でホイルリットルトン降着の0.006倍程度にあたる、エディントン降着の100~1000倍より低い場合は、初代天体において、著しい質量降着より前にBHの合体が進むことが分かった。このように、高いスーパーエディントン降着が実現されない限り、BHの合体が、BHの成長に先に寄与することが明らかになった。



12月1日
09:00-09:40 富田 賢吾 Development of Athena++(I)
09:40-10:00 杉村 和幸 フィラメント状ガス雲分裂時のコアの形状進化
星は分子雲コアの中心に生まれることが知られており、星の質量決定過程を理解する上で、分子雲コアの形成過程を理解することが必要となる。分子雲コアの形成シナリオとしては、フィラメント状の分子雲から分裂してできたコア(分裂片)が重力収縮して分子雲コアができるというシナリオが広く受け入れられている。しかし、フィラメント分裂時のコアの形状進化は理解がまだ不十分であり、最終的に形成する分子雲コアの質量についても不定性がある。さらに、宇宙には低金属領域や外部輻射を受けた領域などさまざまな環境が存在し、それぞれの環境でガスは異なる熱・化学進化をするため、フィラメント分裂時のコアの形状進化や最終的に形成する分子雲コアの質量も変わってくる可能性がある。そこで本研究では、さまざまなポリトロピック指数のガスからなるフィラメントについて、分裂時のコアの形状進化をAMR流体計算コード「SFUMATO」を用いたシミュレーションで調べる。
10:00-10:20 千秋 元 低質量ガス雲の熱的進化と低質量星形成
始原ガス雲の収縮により形成される初代星は典型的に大質量(数10-1000 太陽質量)であると考えられている。一方、現在の星は低質量(太陽質量以下)である。これまでの研究から、金属量が上昇する過程でダスト冷却によってガス雲の分裂が促進され、星質量遷移が起きたと考えられているが、遷移条件は明らかになっていない。本研究では、様々な金属量を持つガス雲の重力収縮過程について3次元流体計算を行い、星質量遷移が起きる条件を求めた。初期の金属とダスト組成、ダストサイズ分布として、先行研究では近傍宇宙のモデルを用いていたが、本研究では初代星の超新星によって生成される金属、ダストモデルを用いる。また、先行する 3 次元計算では無視されていた OH, H2O 冷却を初めて考慮する。いくつかのガス雲と宇宙論的ミニハローについて計算を行った結果、ガス雲の分裂は金属量によってのみ決まるわけではないことが分かった。多くのガス雲では、H2 生成によるガス加熱で安定となり、分裂が抑制される。一方、同じ金属量でも、OH, H2O 分子による冷却が重要となるガス雲においては、ガスの変形が促進され、最終的に分裂が見られた。このようなガスの熱的進化の違いは、収縮時間の違いによってもたらされる。本研究によって、金属量だけではなく収縮時間もガスの分裂条件を決定し得ることが分かった。
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10:40-11:00 福島 肇 大質量原始星からのダスト層への輻射フィードバック
大質量星原始星は降着成長していく段階で大量の輻射を放出し、降着流にフィードバックをもたらす。降着流内にダスト粒子が含まれる時には原始星外層に光学的に厚いダスト層が形成される。ダスト層の内側では原始星から放出された紫外線がダスト粒子に吸収され赤外線として再放射される。この時、降着流のラム圧力より原始星からの輻射圧が大きい場合、降着が阻害されることになる。ガスに含まれる金属量の違いによってダスト粒子の密度もかわり輻射フィードバックの効果も異なってくる。
今回は大質量星の質量降着におけるダスト層の影響を調べるために、原始星の降着成長とともに外層の計算を行った。金属度量によってダスト層は変わるため、特に銀河形成において重要である低金属度量ガスに対する大質量輻射フィードバックの効果も議論する。
11:00-11:20 松下 祐子 大質量星からのアウトフロー
観測から星はその誕生時にガスの放出現象であるアウトフローを出現させることが分かっている。このアウトフローは星の質量に依らず低質量原始星から非常に重い大質量原始星にまで現れることが分かっている。そのためアウトフローは星形成過程を普遍的に理解するために重要な現象であると考えられる。過去の研究で低質量星からのアウトフローはよく調べられているが、大質量星からのアウトフローはあまり調べられていない。本研究では、大質量星のアウトフローを理解することでその形成過程を明らかにできるのではないかという目的のもと、数値シミュレーションを用いて、大質量星形成の計算を行った。この計算では、磁場を考慮し、質量降着率(分子雲コアの安定性)をパラメータとして計算を行った。結果、初期に不安定なガス雲からは、大質量で強力なアウトフローが出現することが示された。また、質量放出率と質量降着率の比は、質量降着率に依存せず、ある一定の割合(10-50%)であることが分かった。計算から得られたアウトフローの物理量は観測とよく一致した。これらから小質量星から大質量星まで根底となる形成メカニズムで同じあると考えられる。
11:20-12:00 田村 陽一 アルマによる重力レンズ銀河の高分解能観測と
Lya輝線銀河の遠赤外線微細構造線観測(I)
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13:30-13:50 今野 彰 赤方偏移2のLya光度関数の明るい側と暗い側への
強い制限
Lya輝線銀河(LAE)のLya光度関数(LF)は高赤方偏移銀河の性質や進化を統計的に理解する上で重要な観測量の一つである。特にLya LFの暗い側では小質量銀河の星形成活動などを、明るい側ではAGNや大質量銀河の存在量を調べることができると考えられている。これまでの研究においても、すばる望遠鏡をはじめとする大型望遠鏡を用いたLAEの大規模サーベイが行われてきたが、観測されたLAEのLya光度範囲が狭く、LAEの天体数が小さいため、Lya LFの明るい側と暗い側に強い制限を同時に与えるまでには至っていない。Lya LFの明るい側と暗い側を精度良く求めるには、Lya輝線を可視光で観測できる赤方偏移のうち最も低いz~2のLAEを探査するのが適当である。そこで我々は、狭帯域フィルターNB387をすばる主焦点カメラに搭載し、合計約1.4平方度の天域を深撮像観測することで、大規模なz=2.2 LAEサンプルを構築した。その結果、log L(Lya) = 41.7-44.4 erg/s のLya光度範囲でz=2.2 LAEを約3400天体検出した。これらの値は、これまでのz~2 LAEの研究と比べて約1桁以上大きいLya光度範囲と天体数である。この大規模サンプルを用いて我々はz=2.2 Lya LFを高い精度で求め、何の仮定も置かずにSchechter関数でフィットすることで、Lya LFの暗い側の傾きに対して alpha = -1.75+/-0.10 という強い制限が得られた。これはz=2のドロップアウト銀河のUV LFの傾きよりやや急か同等であることを示している。また我々はz=2.2 Lya LFの明るい側で、Schechter関数からの個数密度の超過が存在することを明らかにした。さらに本研究とこれまでの研究をもとにz=0-8でのLya脱出率を計算することで、z=0から6にかけてLya脱出率が急激に増加していることを示した。本講演では、z=2.2 Lya LFの暗い側での傾きと明るい側での個数密度超過、z=0から6でのLya脱出率の進化の物理的メカニズムについて議論する。
13:50-14:10 馬渡 健 銀河視線で発見されたz=3.3 DLAの性質
本講演ではほぼ世界初となる銀河視線上DLAの発見について報告する。この天体はVLT/VIMOSによる遠方LBG分光サーベイの中で偶然見つかった。Voigt関数フィッティングから中性水素柱密度を求めたところlog(N_HI)=21.71となり、DLAの中でもより高密度なガス雲に分類される。銀河を背景視線にすることのメリットとしてDLAガス雲のサイズが議論できるということが挙げられるが、我々は発見されたDLAに対してサイズがa few kpc以上という制限をえた。photo-zカタログを用いた対応銀河探査やspecz天体でトレースされる周辺環境などについても報告する。DLAをふくめてHI吸収体を銀河視線で調べることにより高分解能でHI吸収体を調べることができるため、今後それらはIGMと銀河との関係を考える上で重要な観測対象になる。
14:10-14:30 松田 有一 アルマによるz=3ライマンアルファ輝線ガス雲の観測
ライマンアルファ輝線で100kpc以上に広がったガス雲「ライマンアルファブロッブ」は、形成期の銀河と周囲の間のガス流入出過程を探るのに有用な天体と考えられている。我々はz=3にある4個のライマンアルファブロッブのアルマ観測を行った。その結果、ガス雲中にダスト連続光で明るい銀河を複数検出した。これらの銀河の星形成率表面密度を測ってみると、銀河風が吹くとされる閾値を大きく超えることがわかった。今回のアルマ観測から、ライマンアルファブロッブで見えている大きくひろがったガス構造を形作るのに、銀河風が関係していることがわかった。
14:30-14:50 播金 優一 ハッブル望遠鏡とすばる/HSCで探る
z=0-7の銀河・ダークマター関係の進化
銀河を取り囲むダークハローは、ガス冷却や星形成フィードバックを通して銀河の性質と密接に関わっていると考えられている。この銀河・ダークハロー関係を表す物理量として、stellar-to-halo mass ratio (SHMR) が近年注目されている。我々はハッブル望遠鏡とすばる望遠鏡/HSCの大規模撮像データを用いて、z=4-7のSHMRをhalo occupation distribution (HOD) モデルによるクラスタリング解析を使って調べた。約10000個のLyman break galaxy (LBG) から求められたダークハロー質量はMh~ (1-20)x1011 Msunであり、過去の研究と無矛盾であった。見積もられたSHMRはz~0の値と比較すると、z~0からz~4, z~4からz~7で98%以上の信頼性で進化を示しており、Mh~1011 Msunのダークハローではそれぞれz~0からz~4で約3倍減少、z~4からz~7で約5倍増加していた。我々はbaryon conversion efficiency (BCE) も計算し、z~4ではダークハロー質量との相関を確認した。また我々は本研究により得られたダークハロー質量を他のアバンダンスマッチング法による見積もりと比較し、アバンダンスマッチングはダークハロー質量を見積もる強力な手法であることを確認した。
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15:10-15:50 米德 大輔 High-z Gamma-ray bursts for Unraveling
the Dark Ages Mission - HiZ-GUNDAM -(I)
15:50-16:10 廿日出文洋 ガンマ線バースト母銀河における分子ガス観測
Long-duration gamma-ray burst (GRB)は、大質量星が一生を終える際の大爆発に起因すると考えられていている。星形成活動と密接な関係があり、近傍(z=0.0085)から宇宙初期(z>8)まで検出が可能であることから、宇宙における星形成活動を探る新たな手段として期待されている。GRBが発生する環境を探るため、母銀河の観測が多波長で行われてきた。我々のグループは、分子ガス(星形成の材料)の観点から、GRB母銀河の観測を行ってきた。しかしながら、他のグループも含めてこれまでGRB母銀河から分子ガス放射が検出された例はなかった。我々は、ALMAを用いて2つのGRB母銀河(GRB020819 at z=0.41、GRB051022 at z=0.81)のCO分子輝線及び1.2mm連続波の観測を行った。その結果、CO輝線と連続波を空間分解して検出することに成功した。GRB母銀河における分子ガス輝線の検出は初である。十分に空間分解できたGRB020819母銀河では、分子ガスは母銀河中心の星形成領域では検出されたが、GRBが発生した星形成領域では検出されなかった。GRB発生場所での分子ガス/ダスト質量比は、天の川銀河や近傍・遠方の星形成銀河における値よりも有意に小さい。この要因として、GRBが発生した星形成領域に存在する大質量星からの強いUV輻射場によって分子ガスが散逸されたこと、星形成活動の最終段階で既に分子ガスが消費されたこと、が考えられる。
16:10-16:30 早津 夏己 ALMA cycle 2サーベイデータを用いた
z~6.3 [CII]輝線銀河探査
本講演では, ALMA Cycle 2 の1.1mmサーベイデータ(ADF22)を用いた, z~6.3 [CII]158μm輝線銀河探査について紹介する. 本探査の目的は, z~6 の[CII] 輝線光度関数に世界で初めて制限を与え, 遠方星形成史の進化を考察することである. 今回使用しているADF22データはこれまでALMAで得られたサーベイデータの中でも, 最高品質のものである. このデータの観測面積は 2 x 3 分角, 空間分解能は0.5秒角, 深さは100km/s速度分解能でrms=0.5mJy/beamに達している. 解析の結果, 探査体積約3000cMpc3の中で5.6σ(4.3x108-109太陽光度)以上の[CII]輝線銀河候補を5個検出することに成功した. これらの候補は, 全て可視光の観測で非検出で, ダスト連続光も非検出であった. また, 候補の中には輝線速度マップでディスクのような回転の兆候を示すものもあった. 現在, 空間方向, 速度方向のスムージングを変えて, さらなる候補の検出を目指し, 解析を続けている. 候補天体に対して, [CII]輝線だけでなく[NII]122μmも観測することで, 金属量にも制限を付ける追観測提案も準備中である.
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16:50-17:30 前田 啓一 近傍超新星から高赤方偏移超新星へ(I)
初代星の最終段階の候補として、これまでに対応天体が発見されているものとしてはガンマ線バーストおよびそれに付随したIc型超新星(GRB-SNe)、超高輝度超新星(SLSNe)が挙げられる。これらの性質・起源には不明な点が多く、近傍宇宙におけるIIb/Ib/Ic型超新星およびIIn型超新星からの知見を統合してその正体に迫ることが重要である。本講演では、GRB-SNeとSLSNeのreviewに加え、近傍超新星の新たな研究から明らかになりつつ「親星進化」「質量放出」「爆発の性質」およびそれらの相互の関係性について議論を行う。
17:30-17:50 冨永 望 GRB輻射流体計算に向けた
相対論的輻射輸送計算コードの開発
ガンマ線バーストは短い時間にガンマ線を放射する現象である。それらは非常に 明るく、Amati関係、米徳関係と呼ばれる関係が観測的に知られていることから 遠方宇宙を観測する手段としても注目を集めている。しかしながら、その輻射機構は依然として明らかになっておらず、観測データと定量的に比較可能な理論モデルの構築が求められている。そこで我々はGRBの輻射流体計算の実現に向けて、非等方非弾性散乱を取り扱うことの可能な相対論的多次元輻射輸送計算コードの開発を進めている。本講演では、開発中の計算コードの計算手法およびテスト計算の結果について紹介する。
17:50-18:10 石井 彩子 対論的衝撃波近傍の高エネルギー光子輸送計算による
スペクトル解析
GRBは大質量天体周辺で形成される相対論的ジェットに付随して生じていると考えられており, その詳細な放射機構を説明するには輻射輸送と相対論的流体のカップリング計算が必要であると考えられている. ジェットがある程度光学的に厚い状態から計算を始める場合, 輻射と物質の相互作用によるフィードバックが計算結果に影響を及ぼす可能性があるが, 超相対論的流体場かつこの フィードバックの効果を含めたカップリング計算はまだ行われてきていないため, 計算手法を検証しながら構築していく必要がある. 我々は, モンテカルロ法を用いて詳細な散乱過程を考慮した輻射輸送計算手法を構築し, 種々のテスト計算を行ってきた. その結果として, 相対論的衝撃波近傍では物質の温度が低い状態であっても高エネルギー光子が生成され, 輸送の過程で特徴的なスペクトルを形成する可能性があることを示す.
懇親会



12月2日
09:00-09:40 矢島 秀伸 数値シミュレーションで探る銀河形成(I)
09:40-10:00 吉浦伸太郎 Galaxies and the Young Universe: DO-it-yourself
Numerically (GYUDON) I, testing AGN abundance
in Epoch of Reionization
再電離期には、IGM 中に存在する中性水素が銀河から放射さ れた光子によってほとんど完全に電離する。宇宙再電離期の直 接的観測はほとんど行われていないが、高赤方偏移クェーサー の吸収線観測から水素の電離は z∼6 で終了するとされて いる。通常、それを引き起こす電離光子の放射源となる銀河は 主に通常の星形成銀河で説明される。また、同様の観測からヘ リウムの電離が z∼2.7 で終了したという事が示唆されている。 ただし、ヘリウムの電離には水素電離光子の4倍のエネルギー を持つ光子が必要であるため、通常の銀河だけではそうしたヘ リウムの電離をすべて説明するのは難しく、活動銀河核のよう な高エネルギー光子を放射する天体の存在が必要になる。現在、様々な観測によって AGN の存在率のモデルが示唆 されているが、z>3 での観測は曖昧な部分が多くいまだ決定 したモデルは無い。以前までは AGN の存在率は z>3 で急速 に減少するという示唆があったが、これらは主に明るい AGN を観測して得られた結果であり、暗い AGN の寄与が考慮されていなかった。一方で暗い側の AGN の観測による AGN の再 電離への寄与の示唆もあり、通常の銀河は不要で AGN だけで 再電離が起きるという主張もある。ただし、それらの観測はま だ観測した AGN の数が少なく不定性が大きい。
今回、我々は AGN の z>3 以降での光度関数の赤方偏移 に関する進化を簡単なパラメータモデルを用いて計算し、電離 史やトムソンタウ等の観測量を見積もる。そこで得られた結果 をこれまでに得られてきた様々な観測と比較し、高赤方偏移の AGN 存在率がどれくらい制限されるかしらべる。
10:00-10:20 平野 信吾 宇宙初期の天体形成における
Streaming Velocityの影響
現代宇宙論より与えられる宇宙初期の物質分布を出発点とした宇宙論的シミュレーションを行うことで, 宇宙初期の天体形成が調べられてきた. Tseliakhovich & Hirata (2010)は, 従来のシミュレーションには含まれていなかった宇宙再結合期のバリオン・ダークマター間の速度差が宇宙初期の天体形成を左右する可能性を指摘した. その後行われた数値シミュレーションで宇宙最初の天体形成過程への影響が確認され (e.g., Stacy et al. 2011; Greif et al. 2011), また速度差が極めて大きい領域では太陽の10万倍もの重さを持つ大質量ブラックホールが形成するという研究もある (Tanaka & Li 2014).
その一方、速度差の大きさによる初代星形成への影響は系統的には調べられていない. そこで様々な速度差の元での初代星形成を宇宙論的シミュレーションより調べたところ, これまで確認されている以上の影響を確認した. ある程度の速度差があるとダークマターハローへのガス収縮が妨げられて星形成が遅れる. このとき星形成ガス雲の質量が増大するが, それに比べてジーンズ質量は十分小さいため, ガス雲は分裂して複数の星形成サイトとなる. これは初代星からなる星団の形成可能性を示唆している. また極めて大きな速度差の元では, ガス雲が大質量・高温となるまで星形成が阻害される. このガス雲全体が重力不安定となって収縮すると, 大質量星が形成される.
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10:40-11:20 市来 淨與 長波長電波を用いた宇宙論(I)
11:20-11:40 島袋 隼士 21cm bispectrum as probe of
Cosmic Dawn and EoR
宇宙暗黒時代、再電離期の銀河間ガスの状態や温度進化を探る方法として、中性水素の超微細構造による 21cm線電波がある。実際の観測量として、21cm 線輝度温度場の揺らぎのパワースペクトルがあり、これまで、21cm線のパワースペクトルを用いて銀河間ガスの情報や、再電離のプロセスを探る研究が行われてきた。しかし、輝度温度場の揺らぎは天体物理学的効果によって、非ガウス分布に従うと予想される。そこで、パワースペクトルよりも高次統計量である、バイスペクトルに注目し、パワースペクトルで手に入る情報との比較を行った。その結果、バイスペクトルを計算する際の三角形の形によって、輝度温度場を構成する要素の分離が行うことができ、ガスの温度情報、イオン化率や密度揺らぎの情報をそれぞれ取得できる可能性を示したので報告する。
11:40-12:00 浅羽 信介 バリオン-ダークマター間の超音速相対運動が
構造形成に与える影響
宇宙の晴れ上がり以前の光子−バリオン間のトムソン散乱に起因するバリオン−ダークマター間の相対運度が小スケールの構造形成を阻害することが知られている。初代星の形成過程を議論する上でこの相対運動の効果を見積もることは重要であるが定性的な議論にはまだ不十分なところがある。また、初代星の数密度の変化は宇宙の再電離史にも反映されると考えらため、次世代電波干渉計に向けて超音速相対速度の影響を含んだ中性水素21cm線の理論モデルの構築が必要である。
本研究では、球対称崩壊モデルを応用することで相対速度がハローの形成時刻に与える影響を見積もった。その結果、形成時刻の変化はハロー中のバリオン質量の割合の変化によって説明できることがわかった。また、この形成時刻を変化を考慮してPress-Schechter理論によりハローの質量関数を求めると、相対速度によって105Moのハローの数密度がz=10で半分程度減少するという結果が得られた。本発表ではさらにN体シミュレーションから得られた相対運動によるハローの質量関数の変化との関係についても紹介する。
梅村 雅之 おわりに
lunch

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